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経理や財務の人で、自己研鑽を通じて自分の会計スキルを高めていきたいと考えている人は多いと思います。
会計系の検定や資格は意外と多く、「簿記」や「ビジネス会計検定」、「BATIC」、「FASS検定」「USCPA」と言った資格や検定があります。
その会計系の検定の中に「財務報告実務検定」というものがあるのはご存知でしょうか。
財務報告実務検定という言葉を一度は耳にしたことがあるかもしれませんが、一体どのような資格なのか分からない人もいると思います。
難易度はどれくらいで、どれくらい勉強時間が必要なの…?
私の会計や実務の実力が高いことを証明できるテストってないの?
財務報告実務検定を受験することによって、どのようなメリットがあるのでしょうか?
そこでこの記事では、財務報告実務検定とはどのようなものなのかと、オススメするUSCPAの資格についてもご紹介したいと思います。
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目次
財務報告実務検定とは何か
財務報告実務検定は、財務分野における客観的な実務知識・スキルの習得度を測る検定試験です。
日本の上場企業に課されているディスクロージャー(開示)の責務を果たせる人材を育成するための試験になります。
「金融商品取引法」、「会社法」、「証券取引所が定めた適時開示」の3つのディスクロージャー制度に基づいて財務報告書類を作成・開示することが上場企業の責任となります。
株主や投資家などのステークホルダーに対して適切で充実した財務報告が必要になるため、今後も目が離せない資格です。
- 財務報告実務検定の特徴
・一般社団法人日本IPO実務検定協会が財務報告人材育成のため開始
・試験問題は、連結実務演習編と開示様式理解編から構成される
✔︎連結実務演習編:100点満点中 70点で合格
✔︎開示様式理解編:1,000点満点で、スコアにより3段階のレベルでスキル評価。400点未満は評価資格なし
・公式テキストをベースに出題
つまり、財務報告のスペシャリストのための試験と考えてもらうと分かりやすいと思います。
経理部門で作成する計算書類や、総務、経営企画、IRなどの各部門から得られる情報を適切に盛り込んで財務報告書類を作成しなければならないので、書類作成の実務は非常に複雑なものになっています。
似たような資料だけど異なる資料(金融商品取引法、会社法、証券取引所の適正開示に基づく資料)を膨大に作成する必要があるので、そのような実務の能力を客観的に評価することができます。
財務報告実務検定 受験をおすすめする人
財務報告実務検定受験は、以下のような方にオススメです。
・会計の勉強の自己研鑽を考えている人
・簿記(2級など)の知識だけでなく、財務報告の実務の知識も知りたい人
・USCPAの受験を考えており、別の角度から自己研鑽を図りたい人
財務報告実務検定の試験概要について
では、財務報告実務検定はどのような試験なのでしょうか。
早速、財務報告実務検定の試験概要について詳細にご紹介します。
- 試験概要について
・試験方法
・出題範囲
・受験資格
・受験料
・申込期間・試験期間
試験方法
試験方法は以下のとおりです。
- 連結実務演習編
・CBT方式
・連結決算:3~5問、連結開示:3~5問、XBRL:1~2問
・電卓を試験会場に持ち込み、計算問題で使用可
・制限時間:90分
・100点満点中 70点以上で合格
- 開示様式理解編
・CBT方式
・選択式問題:100問、総合問題:3問(計算問題を含む小問2問~3問により構成
※出題割合は、公式テキストの概論編から10~20%程度、各論編から80~90%程度
・制限時間:120分
・1,000点満点のスコア制で3段階のレベルでスキル評価(400点〜)。400点未満は資格称号なし
出題範囲
出題範囲についてご紹介します。
連結実務演習編と開示様式理解編の2つに分けてご紹介します。
基本的に公式テキストに沿って出題されます。
- 連結実務演習編
分野 | 項目 | 主な出題内容 | 割合 |
連結決算 | 連結貸借対照表、連結損益計算書、連結株主資本等変動計算書 | 資本連結、のれん(在外子会社を含む)、会社間取引及び債権債務の相殺消去、未実現損益の取扱い(たな卸資産のみ)、貸倒引当金の取扱い、持分法、税効果会計、在外子会社の財務諸表の換算、退職給付引当金の組替 | 40~45% |
連結キャッシュ・フロー計算書 | 間接法かつ簡便法による連結キャッシュ・フロー計算書の作成(在外子会社を含む) | ||
連結包括利益計算書 | 当期発生、組替調整及び税効果(持分法適用会社の取扱いを含む) | ||
連結開示 | 組替表 | 連結精算表から開示科目への組替、重要性基準(前期における表示の組替を含む) | 40~45% |
開示上の計算 | 1株当たり金額及び各種財務比率の算定 | ||
有価証券報告書等の作成 | 基本財務諸表、ハイライト情報、業績等に関する説明及び関連書類の作成(書類間の照合を含む) | ||
XBRL | XBRLのポイント | 経理の実務とXBRL、会計規則とXBRL、共通のルールと異なる会計規則・運用ルール、タクソノミとインスタンス、表計算ソフトとXBRL | 10~20% |
タクソノミを構成する仕組み | リンクベース、インラインXBRL | ||
EDINET固有の運用ルール | 勘定科目名称(名称リンク)の上書き、「該当なし」要素 |
- 開示様式理解編
試験科目 | 項目 | 主な出題内容 | 割合 |
財務報告概論 | ディスクロージャーの目的・分類・効果 | 総論、ディスクロージャーの分類、財務報告の範囲と開示プロセス、会計制度改革とディスクロージャー制度 | 10~20% |
ディスクロージャーの体制と年間スケジュール | 総論、年間スケジュール、本決算スケジュール | ||
財務報告基礎データの収集 | 決算・財務報告業務開始前に確認しておくべきデータ、データ収集のツールとしての連結パッケージ、有価証券報告書の各開示項目に必要なデータの概要、財務報告基礎データの収集体制の整備、他社事例の収集等 | ||
財務報告に係る内部統制 | 総論、財務報告に係る内部統制の評価・報告の流れ、決算・財務報告プロセス等に係る内部統制構築上の留意点 | ||
金融商品取引法 | 総論、有価証券届出書、有価証券報告書、四半期報告書、内部統制報告書、その他の開示書類、電子開示実務 | ||
適時開示 | 総論、決算短信、四半期決算短信、決定事実・発生事実、不適正な適時開示に対する措置 | ||
会社法 | 各事業年度において作成が必要となる財務情報等、会社の計算等に関する会社役員の責任 | ||
その他 | その他の提出書類等、IRと任意開示 | ||
財務報告各論(金融商品取引法) | 有価証券報告書 | 開示府令・財規・連結財規における規定内容、各数値の計算方法・整合性、表示に関する計算問題 | 50~60% |
四半期報告書 | 開示府令・四半期財規・四半期連結財規における規定内容、有価証券報告書との相違、各数値の計算方法・整合性、表示に関する計算問題 | ||
内部統制報告書 | 内部統制府令の規定内容、財務報告に係る内部統制基準・実施基準の規定内容 | ||
財務報告各論(適時開示) | 決算短信 | 取引所規則における規定内容、有価証券報告書との相違、各数値の計算方法・整合性、表示に関する計算問題 | 10~20% |
四半期決算短信 | 取引所規則における規定内容、四半期報告書との相違、各数値の計算方法・整合性、表示に関する計算問題 | ||
その他の適時開示等 | 決定事実・発生事実・コーポレート・ガバナンス報告書に関する取引所規則における規定内容 | ||
財務報告各論(会社法) | 招集通知(狭義) | 会社法、会社法施行規則の規定内容 | 10~20% |
事業報告 | 会社法、会社法施行規則・会社計算規則の規定内容、有価証券報告書との相違 | ||
連結計算書類 | 会社法、会社計算規則の規定内容、有価証券報告書との相違、各数値の計算方法・整合性、表示に関する計算問題 | ||
計算書類等 | 会社法、会社計算規則の規定内容、有価証券報告書との相違、各数値の計算方法・整合性、表示に関する計算問題 |
認定基準
連結実務演習編については、100点満点中70点以上で合格ですが、開示様式理解編では400点以上で認定基準が変わってきます。
ここでは、開示様式理解編の認定基準についてご紹介します。
点数とレベル、称号の関係についてのまとめ表です。(1,000点満点)
- 開示様式理解編 試験結果の評価区分
点数のレンジ | 称号 | スキルレベル |
1,000~800点 | 財務報告実務検定 【開示様式理解編】 Advanced | 財務報告書類の作成・開示を指揮する能力を備えている 金融商品取引法・会社法・適時開示にまたがる各財務報告書類間の整合性や決算・財務報告プロセスの全体像を把握し、連結グループ各社、社内各部門及び監査法人・印刷会社・株主名簿管理人等の意見を調整しながら、財務報告書類の作成・開示をディレクションすることができる。 |
799点~600点 | 財務報告実務検定 【開示様式理解編】 Standard | 開示実務担当者としての能力を備えている 企業の業績数値や経営指標を用いて業績動向のドラフトを作成することができるとともに、(連結)財務諸表の作成過程において子会社・関連会社や社内の他部門と協働作業ができる。また、開示実務担当者として、(連結)財務諸表の表示及び注記に関する各種規定を熟知し、各開示書類のドラフティングを担う。 |
599点~400点 | 財務報告実務検定 【開示様式理解編】 Basic | 開示実務の補助者としての能力を備えている。 開示実務補助者として、財務報告書類のうち平易な開示項目について、基礎資料をもとに作成することができる。 |
399点以下 | ― (称号なし) | 開示実務に求められる最低限のスキルレベルに到達していないものと考えられる。 |
受験資格
受験資格は特にありません。
日商簿記3級以上の知識があることが望まれます。
受験料
受験料は、会員と非会員で異なります。
試験は、連結実務演習編と開示様式理解編と別々の試験になります。(2つ受験したい場合は2回の受験料が必要です)
・一般 :12,000円(税抜き)
・財務報告実務検定会員、法人(社内受験を含む) :10,000円(税抜き)
申込期間・試験期間
申込期間や試験期間ですが、受験する方の都合に応じて受験する会場や日時を自由に選択できます。
試験は全国にある試験センターでコンピューターでの受験となります。
最新の試験期間を知りたい人は、以下のURLから確認してください。
受験地については、全国の中から受験地を選択することができます。
財務報告実務検定 受験者データについて
財務報告実務検定(開示様式理解編)の受験者データがありますので、参考にしてください。
- 過去累計(2021年10月末時点)
総受験者数 | 5,000人以上 |
- レベル別分布
レベル | 割合(目安) |
Advanced | 10.5% |
Standard | 24.5% |
Basic | 35.0% |
称号なし | 30.0% |
総受験者は、約5,000人以上が受験しています。
受験者の70%以上が合格(Basic以上)となっています。
2010年に開始したので、単純計算で年間500人程が受験しているものになります。
(おそらく開始当初よりも最近の方が増えてきているはずなので、500人以上/年は受験しているのではないでしょうか)
会計の中でも財務報告に的を絞ったスペシャリストな資格なので、資格試験の受験者数としては、やはりそれほど多くはないように思います。
簿記が異常なほど受験者が多いです。
BATICは年間3,000人弱、ビジネス会計検定は年間15,000人、FASS検定は年間5,000人が受験しています。
財務報告実務検定 難易度・勉強時間について
財務報告実務検定の難易度はどれほどのものなのでしょうか?
上のデータでご紹介しましたが、Advancedが10.5%程の割合となっています。
受験者数が少ないこともあり具体的な情報収集は難しいのですが、Web上の情報をみてみるとAdvancedを取得するのにはそれほど時間はかからない様子です。
ノー勉で合格(Advancedか不明)の人も複数名いました。
情報が圧倒的に足りていませんので、受験経験のある方はぜひご連絡頂ければ幸いです。
- 勉強時間について
・実務経験あり:ノー勉で合格可能(Basic)
・実務経験なし:不明(調査中)
つまり、難易度はやや低いという試験かと思います。
財務報告実務検定のサンプル問題
財務報告実務検定のサンプル問題が公式から公開されていますので、興味ある方は以下のリンクをご覧になってください。
サンプル問題の一例を載せます。
財務報告実務検定(連結実務演習) サンプル問題
財務報告実務検定(連結実務演習) サンプル問題 答え
気になると思うので、答えの方も載せて置きます。
いくつ正解できましたか?
ちょっと受験してみたくなったかも、と思った人もいるのではないでしょうか?
財務報告実務検定の学習について
財務報告実務検定を学習するに当たって、おすすめのテキストと問題集をご紹介します。
・財務報告実務検定 公式テキスト&公式問題集
最新版が見つからない場合は、以下のURLから公式テキストと公式問題集を探してみましょう。
日本IPO実務検定協会の公式URLです。
TACでも財務報告実務検定の講義があるので、気になる人は一度ご覧になってください。
USCPA(米国公認会計士)のススメ
この記事では財務報告実務検定をご紹介しました。
ところで、会計だけでなく英語も得意な人で、英語×会計の力をアピールしたい方はUSCPA(米国公認会計士)を視野に入れるのが良いでしょう。
また、財務報告実務検定のAdvancedの資格を取ったところで企業が評価してくれるかは、日本IPO実務検定協会のマーケティング能力次第という他力本願です。
(簿記のように日本で非常に有名な民間資格になれば良いですが、財務報告実務検定はどこまで期待できるか不明です。また難易度が低いという点も非常に気になる点です)
私はUSCPA(米国公認会計士)ですが、そのUSCPAの資格の威力は絶大だと感じています。
USCPAに少しでも興味が湧いた方は、一度以下の記事をご覧になってください。
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最後に
いかがでしたでしょうか?
財務報告実務検定という言葉は聞いたことがあるけれども、どんな資格なのか分からなかったという方は、少しイメージが出来たのではないでしょうか。
財務報告実務検定は資格取得を目的とする検定試験ではなく、自己研鑽や他の資格取得のための通過点として利用している人が多いのではないでしょうか?
USCPA(米国公認会計士)を受験する前に力試しとして、ビジネス会計検定やBATICやFASS、財務報告実務検定を受験する人もいるかもしれません。
国際的な会計基準を知っている人は、今後食いっぱぐれることがなくなると考えられますので、一度USCPAについて調べてみると面白いと思います。
他の財務経理系の資格について気になる方は以下の記事をご覧ください。